旧東京都立大学の開学50周年記念事業

旧東京都立大学は、1949年の創立のため、1999年に50周年を迎えています。では、どのような記念事業が行われたのでしょうか?

委員会設置、準備と予算

記念事業は、「開学50周年記念事業実行委員会」を中心に企画されました。委員長は、学生部長の鈴木浩平教授(工学部)が務め、学部をはじめとする各部局だけでなく、学生自治会、教職員組合、生協からも代表が出ていました。ちなみにこの委員会の発足は19987月と、一年を切った時期で、時間的余裕はありませんでした。これは、1991年のキャンパス移転後における、講座再編などの大学改革に重きが置かれていたためでした。

同委員会は、事業のテーマを「はばたけ都立大世界の世紀へ」と定め、また開学記念日、すなわち9961日から同年12月末までを「開学50周年記念事業期間」として位置づけ、様々な行事を行うことを決定しました。また、同期間内に開催される大学祭においては、記念式典・祝賀会を挙行することとしました。

一方、この事業の予算は、東京都からは資金が望めなかったため、また大学の将来にわたる有用なファンドとするために募金を募ることとなりました。その趣旨は1.開学50周年事業の実施、2.東京都立大学出版会の設立資金、の二つがあげられていました。最終的に、大学構成員、卒業生、企業等から、4000万円を超える額が集まったといいます。

企画・イベント

イベントは、63日のオープニングセレモニーから始まりました。これが6月に行われたのは、旧都立大の開学記念日が6月1日だったことに由来すると考えられますが、なぜ1日ではなく3日だったのかは分かりません。3日が木曜日だったことが関係しているかもしれませんが、どうでしょうか。

さて、その他のイベントの多くは各種講演会・シンポジウムでした。一部のタイトルだけ挙げると、「東京の水環境を考える」「多摩ニュータウンの街づくり・都市環境・安全」「グローバリゼーションと都市」など、様々な分野の講演会・シンポジウムが行われました。また、牧野標本館における特別展示なども行われました。

さらに、上記の講演会などのような比較的学術を中心とした企画だけでなく、ウィーンフィル楽団員参加によるコンサートや、都立大金曜ロードショーなるイベントも行われています。この都立大金曜ロードショーは、8月中の金曜日の3日間、午後2時よりAV棟で映画を上映したもので、それぞれ「タイタニック」「もののけ姫」「ラヂオの時間」と、当時を代表する映画が上映されました。これには学内外から3回合計で220人の参加者があったそうです。

これらの企画は12月の事業終了までの期間で20以上行われました。1件、講演者の急病で実現しなかった企画もあったそうですが、1年に満たない準備期間にも関わらず、概ね順調に実施されたようです。

シンボルマークの制定

63日に行われたオープニングセレモニーでは、50周年を記念してシンボルマークが新しく制定されました。これは学内外から広く公募されたもので、200点以上の応募があったそうです。今回のキービジュアルは、この時に定められたシンボルマークを、筆者がトレースした、イメージ画像です。※ そのものではありません。

記念出版

この50周年を機に『東京都立大学五十年史』が出版されました。旧東京都立大学の歴史をまとめたものとしては、『10年の歩み』と『東京都立大学三十年史』の二つがありました。三十年史が特にしっかりとした内容なので、五十年史ではそれ以降、特にキャンパス移転やその後の講座再編を中心とした内容になっています。

また、『Photo都立大学の50年』という本も作られました。この中には、各時代における学生生活や校舎の様子が収められています。1990年代の南大沢キャンパスと今の様子を見比べると、例えば木が成長しているなど、違いも見て取れ、面白いかもしれません。また、それら日常の様子だけでなく、以前紹介した学生紛争時の写真も掲載されています。

付け加えれば、これらの50周年記念事業の内容は、『東京都立大学メモリアル1999-開学50周年記念事業の記録-』としてまとめられています。

出版会の設立

募金で賄われた事業の予算の趣旨に、東京都立大学出版会がありました。2000年ごろから出版活動を開始し、法学、教育学、社会学など多岐にわたる分野の書籍が出版され、図書館で検索するかぎり、2005年までの間に24冊を数えたようです。

 

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