2.就活について

ー就活時のテーマや軸はありましたか?

モノを作ったり、売ったりというよりは、漠然と社会の問題を解決したいという思いやテーマは考えていました。当時は就職氷河期とも言われていましたので、景気が良くなかったり、少子化・高齢化が進んだり、都市と地方の格差が広がったり、このままいったら日本はどうなるんだろうとか、あまり幸福感を感じられないのではといった課題感や不安感を持っていましたね。なので、それをどうやったら解決できるのかということに関心が強かったです。そんな中で、当時の自身の考えとしては、「有形商材」よりも「無形商材」の方が提供できる意味や価値が大きく、その課題や不安をよりダイレクトに解決できるのではないかと思い、そういった「無形商材」ってなんだろうという観点で就活をしていましたね。

ー「無形商材」の中でも、どのような業界を受けられていたんですか?

初めは広告業界・いわゆる大手広告代理店を受けていました。元々、部活動でも部員を勧誘ポスターを作ったり、そこに載せるキャッチコピーを考えるのが好きで、「形のないものを画像や言葉で表現することによって世の中を動かせたらきっと幸せになる」と思っていました。運よく某大手広告代理店からも内定をもらい、そこで働くつもりでしたね。当時は、内定を3年生の秋頃にはもらった後、内定者が集まってインターンやワークをするので、たんまりと課題・宿題に奔走していたのですが、3年生の3月に、先ほどの雪崩事故が起こったんです。インターンや課題どころではなくなってしまい、部員全員で全力で捜索活動をする為に、その内定は辞退してしまったんです。

懸命な捜索活動によって、残念ながら遺体ではありましたが、2ヶ月後の5月に、発見することができました。それからも大変で、ご遺族に対して葬儀のお手伝いをさせていただいたり、サポートいただいた部活OBに経緯を説明したり、捜索自体はが完了したものの、気づけば4年生の6月になっていました。当時は4年生の6月くらいだと、その時期にはほとんどの企業の採用活動は既に終了を迎えており、私が志望していた広告代理店も、もはや採用エントリーが締め切られていたのです。そこから、広告を軸に探すと求人広告の会社しか残っていませんでしたので、半ば仕方ないという気持ちで求人広告の会社の説明会を受けることにしました(笑)

少々ネガティブな理由で行きついた求人サービス・人材サービス業界でしたが、説明会を聞いていく中で人材ビジネスの社会貢献性の高さを強く感じましたね。そこで人材サービス業界を受けることに決め、テンプスタッフ株式会社(現パーソルテンプスタッフ株式会社)に入社することになりました。

ー人材業界の社会貢献性の高さはどのような点から感じられたのですか?

当時を思い返すと、主に二点ありますね。一つ目は、お仕事に就きたくても就けない人に、お仕事を紹介し、喜んでもらうことができるという点です。当時は、有効求人倍率も非常に低い時代で、お仕事に就けない人がたくさんいましたので、社会貢献性の非常に高い事業だと価値を感じました。二つ目は、日本全体で適材適所な配置を促すことができるというダイナミックな点です。自分たちがハブになって適材な人を適所な産業に動かすことができるという点は、定着ないし衰退していくであろう産業から、これから成長していくであろう産業に、人を移転することで、日本全体を盛り立てていくという使命感の高い仕事であると感じました。

ー就活時に苦労した点はありますか?
そんなになかったですね(笑)某大手広告代理店もテンプスタッフもそんなに苦労した覚えはありません(笑)今振り返るとですが、就活の為に準備することやテクニック的なことを身につけることもなく、思っていることに「素直」だったからかもしれません。ワンダーフォーゲル部の活動や雪崩事故のことも全て「素直」に正直に話しました。

ー現在は人事として面接官も務める桑原さんですが、就活で大切なことはなんだと思いますか。

やはり「素直さ」に尽きると思います。特に学生は、残念ながら能力に大差はないとも思うので、伸び代が大きいと感じる学生を採用することが多いとも思います。「素直」な人は、謙虚に他人の意見を聞き入れるとも思いますし、自身のやりたいことにも「素直」だとも思うので、そういう人は伸び代が大きく、成長が早いと感じます。これは自分自身の経験というよりも、自分が採用の面接官を担う上で感じていることなのですが、「素直さ」に自分の考えを語っていたくことで初めてその方の人柄に触れ、魅力を感じます。いわゆる就職本に書かれているような型にはめたPRでは、その人がどういう人なのか、何をやりたいのか、企業にとって何をもたらしてくれるのかを感じることができないので、企業には刺さらないと思いますよ。

ーありがとうございます。しかしとは言え、行きたい会社であればあるほどその会社に評価される人間になろうと思ってしまう学生も多いと思います。もし対処法があれば教えていただきたいです。

うーん、だとしても、企業に合わせてしまうと後々ご自身がしんどくなると思いますよ。僕自身は、一生企業に気に入られるように合わせなきゃいけないような生き方は、やはり幸せだとは思えないですね。何のために行きたい会社に入りたいかというと、やっぱり幸せになりたいからじゃないですか。なんか、矛盾を感じてしまいます…。

シンプルに、「何がやりたい」、「なぜならば…」というこの二つの説明を「素直」に語ればいいと思っています。数は打たなければいけないかもしれませんが、やりたいことと理由を伝え続けて、ご自身の中で一番フィットする会社を探せばいいと思います。世の中にはたくさんの会社があって、探せばご自身の考えにフィットする会社はきっとあって、大変かもしれないですが、そういう会社に当たるまでとにかく頑張る…ですかね。僕からすると、面接を受ける会社ごとに、自分の考えを捻じ曲げ合わせて、そして入社してからも、会社に合わせ続けるなんて、不幸としか思えないですし、信じられないです…。会社というのは、あくまでも自己実現の手段であると考えて、自分のやりたいことを貫くほうが絶対にいいと思いますね。

確かに、入社してから、思っていた企業と違ったなんてことも、きっとありますよ。ですが、人生は全然一発勝負ではないので、人生のフェーズを4つとか、5つに区切って考えてみるといいとも思います。そりゃ、一発勝負で、長い人生ずっとやりたいことをやり続けられる人は、ものすごくハッピーだと思いますけれど、さすがに人生100年時代ですからね、途中でやりたいことが変わる可能性は多分にありますし、世の中が想像だにもしなかった風に変化し、大学4年生の時に20年後とか30年後とかどうなってるとかは、もはや想像できる人なんていないとも思うんです。と考えると、就職活動が人生の全てと思うとしんどいじゃないですか(笑) 就職して、最初の10年をどう過ごすか、その10年間でやりたいことは何なのかくらいに考えた方が、よほど幸せだと思いますよ。絶対に、自分の価値観も変わってしまうので、新卒の今しかチャンスはないとか、あまり深く考えすぎずに、人生を分割して、最初の10年をどう過ごすか、やりたいことが変わればまたその時に考えればいいというくらいに思っていた方が、結果的には、よっぽど幸せな人生の過ごし方にになると思うな…。

ー学生時代にやっておいた方が良いことはありますか。

ないです(笑)企業に受かる人になるとか、企業に合わせる発想というのは長い人生において、本当に無意味だと思いますよ。人生を4、5分割して考えた時の第1フェーズを迎えるにあたって、今現在やりたいと思うことは何なのか、なぜそれがやりたいと思うのかをとことん突き詰めて考えることですかね。とことんそれを考えることは、オススメいたします。この突き詰めて考えるということがない人は、やはり面接でもわかってしまいますよ。企業の面接官も1年に何百人もお会いしていますからね。瞬間で、「その場しのぎだ」と思うと思いますよ(笑)。

ーやりたいことの見つけ方についてのアドバイスをいただけませんか。

なんか、それ自体が矛盾していると思いますね。やりたいことというのは、自分の中で生まれるものなので、見つけようとすることがそもそも違うような気がします。浮かんでくるまで待つことでしょうか。まずは、きっとあると思うので、突き詰めて考えることですかね。とは言いつつも、やりたいことが生まれやすくするという点で言うと、やっぱり色々な経験をすることですかね(笑)色々な経験をして、ピンとくるものが来た時に見逃さないことが大事だとも思います。シンプルに、自分の中の幸せだと感じる瞬間とか、何やっている時が楽しいと感じるとか、単に何が好きとかについて、ただ考えてみればいいだけだとも思いますけどね。全然、大袈裟なことでなくてもいいと思います。「モテたい!」とかでもなんでもいいと思います(笑)部活とかサークルに入っているのであれば、その部活やサークルに、なぜ入ったのかを考えてみると、「楽しい」とか「好き」のきっかけもわかるんじゃないですかね。ふと心に浮かんだことを、ただただ深堀してみるだけでも第一歩じゃないですかね。

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