第5回 法学研究会を立ち上げ弁護士の道へ

 ー現在の職業を教えてください。

飛松法律事務所で弁護士をしています。

私は、事務所を経営する弁護士、いわゆるボス弁と業務委託契約を結び、その弁護士がクライアントから受けた仕事を割り振ってもらうという立場で、アソシエイト弁護士に分類されます。

事務所の仕事以外に、個人で直接受ける仕事もあります。

基本的には企業をクライアントとして、契約書のレビュー、株主総会指導、規制に関する助言、M&A、裁判などを行っています。中でも裁判の仕事が多く、全体の50%程度を占めています。

また、法律専門書の執筆や、ロースクールでの講師の仕事も行っています。

ー現在の事務所は2社目とお聞きしたのですが、どうして転籍されたのですか?

以前、四大法律事務所と呼ばれる大手の法律事務所にいたときに、今のボスが独立するという話がありました。

私は、今のボスを仕事面や人柄の面で尊敬していたため、独立の話を聞いたとき、現時点では大手事務所でもう何年か経験を積みたいと考えているが、いつかは新事務所に入れてほしい、という話をしており、それに対しては歓迎だと言ってもらっていました。

ただ、今のボスが実際に独立した後、かなり多忙を極めたようで、可能であれば早めに来てほしいと言われました。

今のボスは前の事務所でも人望の厚い弁護士だったため、私以外にも、何人もの優秀な先輩弁護士がついていきたいという希望を出しており、のんびりしていると転籍のチャンスはなくなるだろうとも思いました。

そのため、かなり迷った末、せっかく声をかけてもらった今がチャンスだと思い、弁護士2年目から転籍させてもらいました。

今のボスが事務所を立ち上げた後、半年ほどで私が加入し、それから1年経って3人目の弁護士が加入し、現在、弁護士3人体制で仕事をしています。

ー前の事務所との変化はありますか?

前は大きな事務所だったので、国内外の大規模な案件を取り扱っていました。

そのため、1つの案件に関わる人数が多い場合がほとんどでした。1つの訴訟に10人位の弁護士が参加することもありました。その中で、自分は下働きの立場で参加していました。

具体的には、細かなリサーチや書面のドラフト、クライアントとのスケジュール調整などのロジ周りを行なっていました。

前職では、マネージャー的ポジションの優秀な先輩弁護士がいて、先輩が全体の進捗管理などのマネジメントをしてくれていたのですが、現在は、1つの案件に関わることを全て1人で回しているので、自己規律が非常に問われます。

それなりに時間のかかる案件が十数件ある中で、優先順位を自分で決め、1件1件を適切な時間内で処理していかなければならないという別の大変さがありますね。

決して大規模な案件が来るわけではないのですが、その代わり、1つの案件を自分1人で回すというプレッシャーや責任があります。

ー何に一番時間を費やすことが多いですか?リサーチでしょうか?

リサーチももちろん時間はかかります。しかしそれよりも、裁判において、クライアントの主張をまとめた準備書面というものを作成するのですが、その書面作りに非常に時間がかかります。

私自身の経験が浅いせいもあるのですが、長い書面だと数十時間かかることもあります。

作業としては、クライアントから聞き取った話を基に主張の全体像を把握し、クライアントから頂いた事件に関する資料、たとえば担当者間のメールや、打ち合わせの議事録などに全て目を通したうえで、クライアントの主張を立証するのに最適な証拠を自分の判断でピックアップして、主張に紐づけします。

どうすれば裁判官に納得してもらえるかを意識し、相手の反論を予想しながら、主張を組み立てます。

この作業がとても大変です。当然自分はその事件について何も知らないので、クライアントに何回も話を聞きます。前提となる業界の常識、専門用語等の専門的知識も教えてもらいます。

資料を読んでクライアントの主張に弱みや矛盾点と疑われる事項を発見した場合には、クライアントに話を聞いて、それが本当に弱みや矛盾点なのかどうか、どうすれば筋の通る説明が可能になるかを考えます。

ーとなると、聞く力も問われるということですよね?

問われます。聞き上手ならいいというわけでもなくて、限られた時間内で必要な情報を聞き出さないといけません。色々な可能性を先回りして想像し、考えながら要領よく質問する必要があります。

質問の仕方も事件やクライアントによって使い分けています。経験を重ねて上達していくことだとは思いますが、効率的に情報を聞き取ることに関しては自分の中での課題点だと感じています。

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