本記事は、東京都議会のwebページに公開された、伊東しょうこう議員による名称変更に関する質疑の抜粋です。全文は上記リンクを参照のこと。
概要
3/13(水)に行われた、東京都議会 平成31年度第1回定例会 特別予算委員会において、伊藤しょうこう議員が名称変更に関する質疑を行った。質問は小池都知事、遠藤総務局長に対して行われた。
伊藤議員の関心は、地元八王子市への説明の有無にあり、市への説明は決定後の9月に、学長らによって行われたことを引き出した。
筆者の分析
伊藤議員の質疑について
入試倍率については変わらずは言い過ぎ。
また、認識はしているようだが、首都大学東京と旧東京都立大学は別大学であるため、名称変更と述べるのは不適切。
なお、一部SNSで言われていたような「俺は聞いていない」という言葉は、一言も述べていない。
小池都知事の答弁について
「流れ」として、2018年7月の都政改革本部会議を挙げているが、4月から6月にかけて東京都総務局で検討を進めていることを述べておらず、虚偽答弁とは言えないが、全てを答弁したわけでもない。
前理事長の川淵三郎氏が「名称を変えなさい」と述べたとしているが、大学によると、当時名称変更について検討した事実はなく、あくまで個人的見解にとどまるもので、根拠としてあげるには不適切。
なお小池都知事は旧東京都立大学と首都大学東京とを混同している恐れがある(都議会に出身者が多々いる、など)。
全文
○伊藤(し)委員
続きまして、首都大学東京の名称変更に関連して伺います。
総務局長に伺います。首都大学東京は、東京都立大学などが、平成十七年に再編統合され、誕生いたしました。今定例会では、名称変更の議案が上程されています。どの名称がふさわしいかは議論もあるでしょうが、いずれにせよ、首都大学東京は、都民と地域に開かれた貴重な知的財産であります。
それでは、平成十七年に現在の名称変更を行い、それ以前と比較して、受験者数、就職内定率、研究の成果など、プラスもマイナスも含めて、どのような影響があったのか伺います。
○遠藤総務局長
首都大学東京は、平成十七年度に四つの大学を再編統合して発足いたしました。開学以来、従来より多彩な学問分野を持った総合大学として、都市の課題に焦点を当てた課題解決型の研究を推進するとともに、幅広い視野と専門性を持った人材の育成に取り組んでまいりました。
一方、こうした取り組みにもかかわらず、昨年行った見える化改革の過程におきまして、社会一般での認知度が不十分であることなどが改めて明らかになっており、この点は課題であると認識をしております。
なお、入試倍率についてでございますが、統合前の平成十六年度が七・二倍、首都大学東京の平成三十年度が五・六倍でございます。また、学部卒業者の就職率は、平成十九年度の都立大学卒業者が九七・三%、平成二十九年度の首都大学東京卒業者が九八・二%となっております。
○伊藤(し)委員
首都大学東京への名称変更前も後も、入試倍率も就職率もほぼ変わらずと、相変わらずしっかりと成果を上げている大学であるんだろうと思います。卒業生も優秀な方が多いと聞いております。
知事に伺います。大事なことは、学生に望まれるような魅力あるカリキュラムを編成することや、さまざまな研究成果を社会に還元することなど、名前を変えるより、都民生活や都政の発展に資する大学へ中身を充実させることであります。
それでは、大学の名称を変える意図は何なのか、知事に伺います。
○小池知事
まず、流れを改めて見ておきたいと思います。
昨年七月に都政改革本部会議を開きまして、総務局と公立大学法人が行った見える化改革、それについて報告がございました。中身は、首都大学東京の持つ教育研究水準に比べて、認知度、ブランド力偏差値が低いことなどが課題との報告でございました。
私自身も首都大学東京のこのような現状については、いろいろな方から、これまでもお話を伺ってまいりました。都庁の職員も出身者が多いですし、また都議会でも、出身者は多々おられると伺っております。
中でも、二十九年の春でしたか、ご退任になった川淵三郎さんが知事室をお訪ねになられまして、最後に一言だけいっておくと。名称を変えなさいということもおっしゃって去られたのは大変印象的でございました。
このような形で、その後、公立大学の大学法人首都大学東京、改めて都立の大学であるということを、都民の方々にわかりやすく発信をすること、教育研究成果を都民、都政に還元していくという大学の存在意義をこれまで以上に明確にしていくということで、名称変更についての方針を決定したところでございます。
この名称変更を契機といたしまして、開学以来の実績を土台とし、教育研究をさらに充実をさせていく。そして、名実ともに都立の大学としてのプレゼンスの向上を図れるように、都としても支援をしてまいりたい、このように考えております。
○伊藤(し)委員
いろんな人から聞いたというようなお話もありましたが、要は、一昨年、平成二十九年六月の都議選の際に、当時知事が代表を務めていた都民ファーストの会の政策集には、首都大学東京の名称を再検討し、都民に身近な大学へ改革と掲げていました。
その結果、知事のご答弁にもありましたが、昨年の七月の都政改革本部会議で、知事が、東京都立大学への名称変更を提案し、約一カ月後の八月二十四日には正式プレス発表と、都民の意見も聞かずにたった一カ月で決めたわけです。
今回、大学の名称を変更するに当たり、きちんとしたプロセスを経ずに、都民の声も聞かず、知事の鶴の一声で決めるのは、都民ファーストではなく、都知事ファーストということになりますよね。
それでは、総務局長にお尋ねをいたします。
実際の名称変更は、来年の四月一日と聞いております。本部キャンパスがある八王子市に聞いたところ、道路標示や各種看板、またパンフレットなど、名称変更にかかる経費は数百万円とお聞きをいたしました。
こちら、パネルにありますけれども、例えばこういった道路標示とか、あるいは避難所の表示、こういったこと、そのほかにも印刷物とか、いろんなものがあります。名称変更には、大学や東京都以外にも、さまざまな影響があるということをしっかり認識してもらいたいと思います。
地域との連携や貢献は、私立でも公立でも欠くことのできない大事な要素であります。すなわち、地元の理解や協力なしで、今のキャンパスはあり得ません。
それでは、名称変更について、地元八王子市にも事前に話ぐらいは、これから変えようと思っていますと、話ぐらいはしていると思いますが、地元市にいつごろお話ししたのか伺います。
○遠藤総務局長
首都大学東京におきましては、名称変更の手続に着手することを発表した翌月には、学長を初め幹部職員が、メーンキャンパスの地元である八王子市や関係団体に赴き、この間の経緯や今後のスケジュール等を説明いたしました。
引き続き、それぞれのキャンパスのある地元区市には丁寧に説明し、ご理解をいただくよう活動すると聞いております。
○伊藤(し)委員
要は、知事が提案をしてから、たった一カ月ぐらいしかありませんでしたから、地元市に説明する暇もなく発表してしまったと、こういうことだと思います。この大学のある南大沢の本部キャンパスといいますのは、多摩ニュータウン事業の二十住区というところになりまして、平成三年にキャンパスが移転をしました。
このときに、地元の住区につきましては、小学校二つと中学校一個と、住居と、あるいは会社とか、しっかりとした都市計画ができていたのを、当時、東京都立大学が移転するのを受け入れるために、わざわざ都市計画まで変更して、地元は受け入れました。
ですから、もちろん大学がいろんなことをやるのに、一々全部地元に相談をしろとはいいませんけれども、名称変更とか、とにかく大きいようなことが起きるときには、少なくとも、そういった思いをしょった地元にも本当は心を寄せるのが、私は真の都民ファーストだと思っております。
ぜひこういった首都大学の名称、もちろん、いろんな名称に変える賛否両論あるかと思いますけれども、大事なのは、大学の中身をしっかりしてもらうことだと思います。首都大学に統合して、たった十三年しかたっていないにもかかわらず、大学の情報発信の努力不足を棚に上げて、そして、知事の自分の公約を拙速にトップダウンで決める手法には全く理解ができません。こうした自分ありきの知事の姿勢、都民不在の姿勢であることを指摘しまして、私の質問を終わります。(拍手)