旧東京都立大学は1991年4月に目黒・深沢から南大沢へと移転したわけですが、一口に移転といっても、実際の引っ越し作業が必要でした。そこにはどのような苦労があったのでしょうか。
移転計画の立案
移転の準備は着工翌年の1989年にはじまり、5月には東京都立大学引越委員会が設置され、荷物の調査、引っ越しの計画、経費の見積もりなどが行われました。
計画は、まず新規購入機器を90年末から91年2月に新キャンパスに納入、その後2月半ばから3月半ばまでの間に移転する物品、各種機材、薬品、図書類、標本類などを搬入する、というものになりました。これは、授業自体は通常通り行われるため、試験が終わるまでは本格的な引っ越し作業ができなかったためです。それに基づき90年9月に入札が行われ、17億5,100万円で日通他の共同企業体により落札、業者が決定、移転計画の詰めが行わました。
一方、移転も間近になった同年12月には、大学として目黒キャンパス近隣の人々を招いての「感謝とお別れの集い」が開催されています。
引っ越し
翌1991年1月17日、出発式が行われ、実際の作業がスタートしました。まずは新規購入備品の搬入に力を入れながらも、理学部と工学部および図書館の一部の物品を移動させています。作業が本格化したのは試験が終わった2月中旬からで、3月12日にはショウジョウバエを保管する試験管約2万本の引っ越しが行われましたが、これはテレビ局5社の取材により搬出の様子が全国放映されたそうです。最終的な移転件数は図書170万冊、機械機器類23,000点、RI関連物件200点、薬品類2,700箱、植物標本40万点、その他実験用動植物など、4トントラックのべ3,000台にも及んだそうです。
また、機材など以外にも移設されたものがありました。南大沢キャンパス南門から北門にかけて両側にある24本の銀杏はすべて目黒キャンパスから移植したものですし、深沢キャンパスからはメタセコイア12本が東門付近に移植されました。また7号館壁面にあるレリーフ(写真)は、いくらか時期は外れますが、1994年に目黒キャンパスの学館が取り壊された際に移設したものでした。
このように、移設作業が進む中、旧キャンパスで最後の行事となる卒業式が3月25日に行われ、30日の土曜日が最終の引っ越し日となりました。29日まで事務を旧キャンパスで行っていたため、搬出が終わったのは30日の深夜、新キャンパスへの搬入は翌朝にも及んだそうです。