大変なことは情報を引き出すこと、情報をまとめること
ー仕事を行う上で大変なことは何ですか?
先ほどの準備書面の話と重なりますが、大変なのは情報を引き出すことと、情報をまとめることの2つですね。
例えば、先ほどお話したのは訴訟の話なのですが、M&Aでも似たようなことを行っています。
M&Aは、企業が企業を買収することを指しますが、その際に、買収する側の企業が、買収対象企業を買収しても問題がないかどうかについて、私たち弁護士や、会計士などに調査を依頼します。
弁護士は、買収対象企業にM&Aの障害となるような法的な問題がないか、簿外債務など企業価値に影響を与える問題がないかといったことを調査します。このような調査をデューディリジェンス、略してDDといいます。
DDにおいては、買収対象企業にインタビューをして情報を引き出したり、引き出した情報をまとめる力が問われます。
ー簿外債務とは?
企業は、貸借対照表という企業の財務状態を表す書類を作成しないといけないのですが、貸借対照表に記載していない債務を抱えていることもあるんですね。企業が認識していなかった未払残業代がその一例です。これを簿外債務といいます。
ー簿外債務を調べる方法を教えてください。
調べる方法としては、買収対象企業のあらゆる資料をもらい、かつ、資料に現れない部分は会社の経営者に話を聞く、いわゆるマネジメントインタビューを行います。
経営者の話に嘘がないかということも資料と照らし合わせながら確認します。これらを通じて、買収対象企業において法令に違反する慣行や行為が存在しないか、存在するとすれば、法令違反により未払いとなっていた債務はないか、法令違反によって発生する責任はないか、といったことを検討します。
M&A仲介の方から情報をもらうこともあります。こうして得た情報や検討内容をDDレポートとしてまとめ、そのレポートを基に、買収する側の企業にDD結果を報告します。
このような案件に対応するには、法律の知識だけではなく、会計の知識も必要となります。企業の決算書を読めないといけないので。また、労務面に関心を持たれるクライアントも多いため、労務の細かな知識も必要となります。
ーM&A仲介の人が嘘をついていないかどうかも調査するのでしょうか?
仲介の方が嘘をつくことはないと思います。ただ、仲介の方は基本的に案件を成立させたいと考えているのに対し、弁護士は、買収する側の企業が損害を被らないようにしなければならないため、案件の成立を妨げる可能性があるような買収対象企業に不利益な情報こそ、積極的に収集する必要があります。
そのため、DDにおいては徹底的に調査を行いますが、その結果次第では案件が破談になることもあるので、そこで緊張関係が生じることはあります。
ー仕事はどのように依頼が来るのでしょうか?
事務所の仕事は、ボスの昔からのクライアントがいるので、そのクライアントから依頼を頂きますし、クライアントの紹介でそれまでお付き合いのなかった企業から依頼を頂くこともあります。
問い合わせページ等では受けていません。ありがたいことに、それでも十分すぎるほどの仕事量があるんです。私が個人で直接受けている仕事も、基本的に、友人や知人から、あるいは友人や知人の紹介で依頼を頂いています。