東京都が一瞬で決めた大学名
現在では「自明」のようになっている「東京都立大学」という大学名ですが、これは旧東京都立大学成立時においてはどのように決まったのでしょうか。
『東京都立大学三十年史』(初出は『10年の歩み』)に掲載されている、五唐勝氏(当時人文学部助教授)の「大学ができあがるまでの回想」によると、母体となった6高専がいずれも「東京」を冠せず、「都立~」という名称だったため、氏は同様の形になることを期待していたようです。ところが、大学設置委員会において教育長が「東京都立大学」とし、一瞬にして決定したと述べられています。ここについて五唐氏は、「極めて厳粛な一瞬、肩の荷がおりたような、涙の溢れ出るような、ちょっとたとえようのない一瞬」と回想しています。
大学設置委員会には、もちろん大学側の関係者の出席もありましたが、実は東京都立大学の名前も、このように東京都によって決められた、ということがわかります。
"TMU"への違和感の表明
英語名のTokyo Metropolitan Universityについては、決めた経緯はわかりませんが、これも当初は異論があったようです。『三十年史』で田嶋榮氏(当時工学部教授)は、Metropolitanがシカゴやデトロイトで使用されている例を挙げて「主要都市の意で首都を指しているわけではない」と述べ、City University of Tokyoや、Tokyo City Universityという英語名を提唱しています。またそのほかにも創立当初に團勝磨氏(のち総長)はニューヨークのメトロポリタン・オペラ劇場を思わせていやですね、と述べたとされています。
とはいえ、今では英語名へ違和感があるとの話はあまり聞くことがありません。どうやら長く使ううちに馴染んだようです。