第11回 街づくりを担う不動産デベロッパーの仕事

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プロフィール

2011年 都市環境学部 建築学科 卒業
2013年 都市環境科学研究科 都市システム科学域修了
2013年 NTT都市開発株式会社 新卒入社
2018年 東急不動産株式会社 中途入社 現在に至る
学生時代のサークル・課外活動は、
2007-2008:ファッションショーサークル「CAP5」
2008-2009:デザインサークル「ジパング」
2009-2013:NPO法人モクチン企画

*zoomにてインタビューさせていただきました。

仕事について

ー仕事の内容を教えてください。
不動産デベロッパーとして都内の大規模再開発の新規検討や事業推進を行なっています。現在の会社に転職して最初に携わった仕事は、表参道の交差点に商業施設を計画するプロジェクトでした。
不動産開発は主に3つの仕事があります。
 ①スケジュール管理(進捗管理・各所調整)
 ②コスト管理(事業収支構築・更新)
 ③クオリティー管理(商品企画)
初期段階ではどんな商業施設にするか、マーケット調査、インタビュー調査など現状分析を行い、設計事務所やコンサルティング会社と一緒にコンセプトを作っていきます。また、1つ1つの物事はデベロッパー1社で決めるのではなく、地元住民や地権者の皆様と一緒に合意形成を図りながら進めていく為、完成した建物は派手でもそのプロセスは地道で愚直な仕事でもあります。
1つのプロジェクトにかかる年数は約7〜20年。1プロジェクトあたり、約5〜6人チームで構成されています。ただ、1つのプロジェクトに事業化〜竣工まで携わるということは滅多になく、様々な経験、知識を得る為に3~4年周期でチームメンバーは入れ替わっていきます。皆でタスキを回して1つの施設を作っていくイメージですね。
ー不動産に興味を持ったきっかけは何ですか?
高校生の頃から大規模な街づくりに携わりたいと思っていました。大学生になって、同じ学科のOBに森ビルで働いている人が居て、デベロッパーという職業を知り、コレだと直感的にビビッと感じました。建物の詳細な設計ではなく、街全体の仕掛けづくりに興味があった為、大学院に進学する際にも、建築工学と都市工学に分野が分かれましたが、都市工学を選びました。
ー建築ではなくなぜまちづくりに興味があったのですか?
高校時代にブラジルの首都ブラジリアを初めて見た時に大きな衝撃を受けたことがきっかけです。上空から見ると街が鳥の形をしていることに興味をもち、計画した人がルシオコスタという建築家だと知り、大学は建築学科を選びました。いざ、建築学科に入ると、同級生の約9割が家を作りたいと思っている人ばかりだったのですが、私はもっと街にインパクトを与える仕事をしたいと思っていました。そのような仕事ができる場として、シンクタンク、広告代理店、設計事務所、まちづくりコンサル、NPO、行政など様々な職業を検討したのですが、その中で、街に対しハードとソフト両輪で様々な手法で自らが主体となって仕掛けられるのがデベロッパーだと感じ、今の仕事を選びました。詳しくはこちらの本に私も一部寄稿しているので、興味がある方は是非ご覧ください。
『まちづくりの仕事ガイドブック まちの未来をつくる63の働き方』
http://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-book/9784761513634/
ーありがとうございます。実際に働いてみて、思い描いていたとおりでしたか?
入社して最初の仕事は、大手町プレイスというツインタワーの開発企画業務でした。入社前にかなりの人に仕事の話を聞いていたので、大きな違和感やギャップは無かったですが、いざ入社すると、大きな仕事は小さな仕事の積み重ねで出来ているという事を強く実感しました。というのも、思いの外、多岐にわたって細かな業務がたくさんあったからです。また、大企業、様々なステークホルダーが居る中で自分が考えた企画を通すには、周囲を巻き込む力と他人に任せず自ら推進していく力がとても重要であることを学びました。学生時代に色んな企画をやり遂げた経験もあり、鳴り物入りで入社したつもりが、当然学生レベルの延長で通用するハズも無く、悔しくて泣いた日々もありましたが、自分が提案した企画が通って実現した時は達成感がありましたね。

学生生活&就活活動について

就活は具体的にどのように行なっていましたか?

デベロッパーと広告代理店に絞り、全部で7~8社程しか受けていません。広告は地域のブランディングというアプローチに興味があり、博報堂やADKのインターンに行ってました。しかし、いろいろな話を聞くと、広告代理店の花形はビールや車・メーカー等のCMの仕事であり、地域ブランディングという仕事は会社のホンの一握りの人しか携わらない外様な仕事だと感じ、違うなと思いました。こうした中で、自分の価値観が定まり、改めてデベロッパーに魅力を感じるようになりました。

 

では、多くの企業に対して就活をするというより、定めた就活だったということですか?

そうですね。大学入学前から漠然とですが、やりたいことは決まっていましたし、それは在学中も変わらなかったです。周りは3年生や修士1年の時に一斉に就活モードになって人格が変わるように就職活動を始めていましたが、私は大学1年生の時から仲良い先輩に紹介してもらって、私の興味ある仕事で働いてるOBと飲み行ったりして自分の興味を明確にしていきました。なので、就活というより、自分のやりたいことが何か常に考えていたので、それを就活用に言い換えただけという感覚でESを書いたり、面接を受けたりしていました。

 

学生時代はどんなことを考えて生活していましたか?

和敬塾という都内の様々な大学生約500名が共同生活を行う学生寮に住んでたこともあり、真面目に勉強だけやってても、東大、慶應、早稲田生には勝てないと思ったので、勉強以外の何かを頑張ろうと思っていました。中高は福岡の私立の中高一貫校で担任の方針で、原則部活禁止だった為、大学では中高経験者のアドバンテージが無い、大学生から始める大学生にしかできないことをやりたいと思っていました。

 

具体的にどういうことをしていたのでしょうか?

大学1年生の時には新しくファッションショーのサークルをゼロから立ち上げると聞き、服が好きだったのもあって、参加して大学祭でファッションショーを企画しました。2年目では、もう少しデザインが出来るようになりたいと思い、そのファッションショーのWEBやロゴを作成していたサークルに入りました。そこではイラストレーターやフォトショップを使いポスターやロゴを作ったりしながらイベント企画も行なったりしていました。3年目は、もう少し建築のことをやりたいという気持ちと、学科内の閉鎖的で馴れ合いな雰囲気が苦手で、学外で建築の活動をしていました。具体的には都内有志の建築学生が自ら木造賃貸アパートを探し、自らオーナーと交渉し、リノベーションさせてもらうという活動です。初年度は、無印良品を販売する(株)良品企画と(株)ブルースタジオというリノベーション会社がサポートしてくれるのと、他大の建築学生と交流出来る刺激もあり、大学の授業より夢中になって取り組んでいました。現在は法人化(NPO法人モクチン企画)され、当時の一部メンバーが残ってそれを生業として活動が続いています。このように自分の趣味の延長から、建築・街づくりに徐々にシフトさせていました。

 

すごいですね。現在の学生にメッセージがあればお願いします!

「学生のうちにしかできないことをしてください!」社会人になったら出来ないことなんて、究極無いですが、例えば世界一周や起業等は、遥かに大学生の方がやりやすいと思います。大学生のうちにしかできないことは何かしっかり考えて行動したほうがいいと思います

また、自分の大学から出るのも1つの選択肢だと思います。人は自分と同じ志向、価値観の人と一緒に居ると安心して居心地も良いのですが、自分に刺激と成長の機会をくれるのは異分野・異業種の人達だと思います。自分も先ほど、真面目なことばかり言ってましたが、バイト先や学生寮の友人と海外旅行したり、ナイトクラブでDJしたりで遊んでばっかりでした。

 

では、就職活動をする上でのメッセージはありますか?

転職は何回でも出来ますが、“新入社員(新卒)”は人生で1度きりなので、本当に自分がしたい仕事は何なのか真剣に考えたほうがいいと思います

 

新卒に思い入れがあるということですか

思い入れというより、各々の社会人像は、新卒で入社した企業マインドや最初の上司に影響を受けている人が多いと思います。仕事の進め方、仕事に対するスタンス、目指したい社会人像等は最初の企業で構築されやすいです。新卒だけはやり直せない為、とても重要だと思います。

 

ではどうやって新卒で入る会社を選べばいいでしょうか?

例えば、3タイプの社会人いるとします。

A君:40歳、年収400万、子供2人4人家族、戸建て住まい、地方の市役所勤務。
B君:40歳、年収800万、DINKS、都内近郊マンション住まい、都内メーカー勤務。
C君:40歳、年収1,500万、独身、都内タワマン住まい、大手コンサルタント会社勤務。

この3人の中で一番幸せなのは誰でしょうか?答えは、各々で、それぞれ自分が一番幸せだと思っています。つまり、正解は1つじゃないので、自分にとっての幸せは何かその軸がないと、常に隣の芝が青く見えてきてしまい、誤った選択をしてしまう恐れがあるということです。

何が言いたいかというと、しっかり自分で選ぶということ。しっかり悩んでたどり着いた1社目であれば良い。それで違ったらしょうがない。学生で得られる情報の中で、職業を選択するのも、なかなか難しい所もあるかと思いますが、周りに流されて相対評価で会社を決めるのではなく、自分なりの軸を見つけ、自分の基準でビビッとくる会社を探してみてください。心から応援しています。

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