第7回 ゼロから1を生み出す仕事、官僚の魅力とは?

B!

現在の職業と具体的な仕事内容について教えてください。

国土交通省大臣官房大臣秘書官室の大臣秘書官補佐を拝命しています。国家Ⅰ種法律職という、いわゆる「キャリア官僚」に当たります。首都大学東京を卒業し、東京大学大学院を経て平成25年に入省しました。

法律事務官として、長らく法令の企画立案、解釈を担当してきました。具体的には、様々に変化する社会情勢や市場のニーズに対応し、法令に基づく新しい制度を立案したり、既存法令の運用の考え方を整理する仕事です。

ただ、今は若干特殊な役職に身を置いており、大臣秘書官室という、国土交通大臣の直轄スタッフとして、大臣の職務をサポートしています。国土交通省は霞が関最大の役所であり、その所管する分野は防災、交通、街づくり、観光、産業振興、海上保安等、非常に多岐に渡ります。ありとあらゆる案件が最終的には大臣の下に集まってきますので、これらの交通整理を行うことは、国土交通省という組織が機能するために必要不可欠なのです。

 国交省に入った理由を教えてください。

大学に入学した当初は法曹を志していましたが、3年生頃に初めて「官僚」という存在を知り、興味を持ちました。社会にあまねく存在する不幸や紛争、不合理性に個別具体的に関わる司法の世界よりも、これらに一般的に関与できる行政の世界の方が性に合っていると感じました。

 私はこのことを、よく次のように説明します。つまり、司法はマイナスをゼロに戻すのが仕事だが、行政はゼロを1にするのが仕事である、と。もちろん、雑駁な要約であり、司法の役割は紛争解決に限定されるわけではありませんが、しかし、行政という機関が、人々の幸福の一般的実現「のみ」を追求することが許された稀有な存在であることは事実です。

 また、意外に思われるかもしれませんが、「官僚」という仕事のクリエイティビティもその魅力の一つです。政府には、変化する社会情勢に対応し、あるいはその変化を予想して、最適な社会制度を用意する責任があります。つまり、「官僚」には、常に新たな企画を立案するためのクリエイティビティさやチャレンジ精神が求められるのです。特に国土交通省には、若手の提案であっても積極的に議論し、新たなプロジェクトに繋げていく風通しの良さがあります。若い頃から自分で考えることが求められ、大きなプロジェクトに関わることができるのです。

 採用のプロセスを教えてください。

いわゆる「キャリア官僚」の採用プロセスは大きく分けて2つです。一つ目は、国家公務員総合職試験(私の時代は「国家Ⅰ種試験」という名前でした)です。これは法律や経済といった専門科目と、英語や数学、社会科学、自然科学といった教養科目、さらに面接からなる総合的な試験で、倍率は20倍前後と言われています。この試験に合格すると、いわゆる「官庁訪問」と呼ばれる各省庁での採用面接を受ける権利を得られます。つまり、試験に合格しただけでは省庁に入ることはできないということです。

このような一風変わった慣例的な採用システムには様々なルールがありますので、省庁に興味がある方はぜひ勉強してみてください。

就活で気を付けた点を教えてください。

学生の皆さんにアドバイスしたいのは、キャラを作らないことです。私自身の経験ですが、「ココは体育会系の組織だからそういうキャラで行こう」と考えてムリをしたところ、それが反対にマイナスに評価されたことがありました。逆に、今の職場では、本当に自然体で、思っていたことを適当に喋っていたら内定をもらうことができました。就職活動には確かに「肌に合う」といったフィーリングの部分が存在します。長く勤めるためにも、就活の時はあまり作りすぎないことをぜひおススメします。

 今の職業は向いてると思いますか?

向いていると思います。私は自分のやりたいことを実現することに楽しさや面白さを感じるタイプなのですが、省庁の仕事は(前にも述べたとおり)新しい企画をとにかく立ち上げろ、という風潮があり、個人主義的なところも結構あるので、自分に向いていると思います。今後も、自分が面白いと思う仕事を追求していきたいです。

 

学生時代にやってよかったことを教えてください。

「首都大学東京法学研究会」というサークルを大学一年生のときに立ち上げて、4年間育てたことが一番の思い出です(皆さんご存じですよね!)。組織を一から立ち上げて、100人を越える規模に育て、これをマネージするという仕事からは、とても多くのことを学びました。組織が大所帯になると、様々な軋轢が生じますので、これを処理するためのシステムを如何に効率よく構築するのか、という課題に夢中になった4年間でした。特にウチの大学は人数が少ないこともあり、新しいサークルを立ち上げて勢力を拡大する過程では、それはもう色々な揉め事がありました。一緒にサークルの黎明期を乗り越え、支えあった仲間とは今でも良い関係です(第5回で登場した山本君もサークルの仲間です!)。

自分の仕事は自分で作る、という私の仕事に対するスタンスも、この経験を基に形作られたように思います。

2020年度からは「首都大」はとうとう「都立大」に戻ると聞いています。「サークルづくり」は万人におススメできる趣味ではありませんが、時間が自由な大学時代だからこそ、何か新しいことをはじめてみるのも面白いのではないでしょうか。新しい「都立大」の時代を作る皆様が貴重な4年間を面白く過ごせることを祈っております!(中央省庁に興味のある方がいらっしゃったらトリコネ経由でもぜひご連絡ください!)

-ありがとうございました。

内山さんが立ち上げた法学研究会はコチラです。是非のぞいてみてください!

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