大学時代は勉強詰めの日々


ーもともと弁護士になりたいという夢があったのですか?

小学生の時から弁護士という仕事に興味はあり、卒業文集では将来の夢を弁護士と書いていました。高校の時は、弁護士になりたいという気持ちは50%にも満たなくなっていたのですが、大学進学を境に、一念発起して弁護士を目指しました。

大学に入ってからは、毎日5~6時間は勉強していました。授業以外は、ほぼ図書館にこもっていましたね。法律の勉強だけでなく、大学で興味を持って履修していた政治学、社会学、経済学等の勉強もしていました。

ーなぜそんなに勉強に力を入れていたのですか?

高校の時に勉強しなかったことを後悔していたんです。高校の時、かなり厳しい運動部だったので、引退するまでは勉強する時間がなかったんです。

毎朝7時前に学校に行って朝練をしていたので、疲れた状態で授業を受け、授業中は居眠りすることも多かったです。

放課後、部活が終わるのが大体20時頃だったのですが、その後も自主練をしていたので帰宅は22時過ぎになり、帰宅後は倒れるように寝て、気が付いたら一日が終わっていたという感じでしたね。部活が完全にない日は年に数日でした。

高3から大学受験の勉強をし始めたのですが、その時の経験から、勉強は付け焼刃ではなかなか難しいと感じたので、大学では1年目からきちんと勉強しようと思っていました。

ー大学時代は研究会を立ち上げたと聞いています。どのような研究会ですか?

法学研究会といって、判例に関するディスカッションを行う研究会ですね。

法学の教科書は、法律をわかりやすく解説しているのですが、抽象的な解説にとどまっていることが多く、教科書だけでは実用的な知識に結びつけるのが難しい面があります。

そこで、法律が具体的にどのように適用されるのかを判例の学習を通じて知る必要があります。判例というのは、特定の事案に対して法律を適用した結果出てきたものなので、事案を少し変えたらどうなるんだろうとか、別の法律構成をとったらどうなるんだろうという風に色々と想像することは法律の理解を深めるうえで有益です。

このような想像は当然他人と話をしながらのほうが広がるわけなので、ここに研究会という形で議論することの意味があります。こうした活動を法学研究会で友人たちと行っていました。こういう事例があったらどっちが勝つんだろうなどといったことです。

ー首都大を卒業してからの進路は?

東京大学のロースクールに入学しました。東大では学部時代より勉強したと思います。大学の近くに家を借りて、朝から晩まで、授業の予習復習だけでなく、教科書に掲載されていないマニアックな判例も含め、あらゆる判例を読み込む勉強をしていました。

ーなぜそこまで勉強詰めの生活を送っていたのですか?

東大ロースクールの学生は成績順で就職先が決まっていきます。成績上位者は色んな事務所から引っ張りだこになります。なので、みんなそうなりたくて必死で。この中で戦わないといけないんだと思い、自分も必死に勉強しました。

それが功を奏したのか、入学して最初の年の総合成績で、1学年定員240人の中、学年3位の成績順位となりました。60人ごとに分けられたクラスが4つあり、自分のクラスでは1番の順位でした。成績優秀者として表彰を受け、成績上位5人だけがもらえる奨学金をもらっていました。

ー東大ロースクールに入るにはやはり試験が必要なのでしょうか?

法律の試験が必要です。また私の頃は適性試験という地頭を測る試験も必要でした。私が受けたときは倍率は6倍ぐらいで、東大生でも落ちる人は多かったそうです。ただ、それでも入学者の半数以上は東大生でした。4分の1が慶応生だったと思います。

そういったこともあり、最初は学歴コンプレックスがありましたね。同級生はみんな、大学はもちろん、高校も名の通った学校を卒業していました。実際、頭はとてもいいし、IQが高いなと感じていました。でも自分は勉強では負けないようにしようと思ったんです。めちゃめちゃ頑張りましたね。

ロースクールを卒業しなくても司法試験を受けられる予備試験という制度があり、みんなその試験に受かることも目標としていました。私もその試験を受け、合格しました。当時、合格率は2~3%だったと思います。

そして、司法試験を同級生よりも1年早く受け、合格しました。

ーその後は?

ロースクールがとても好きだったので、卒業までいたいという思いがありました。ただ、内定先の説得もあり、早めに社会に出ようと決意し、入学から1年半で中退し、そのまま司法研修所に進みました。

ー司法研修所とはどのようなところですか?

司法研修所は最高裁判所が設置する教育機関で、司法試験合格者に対して裁判実務を叩き込む場所です。

裁判所には、準備書面を作るときのしきたりをはじめ、不文律的なしきたりがたくさんあります。そういったしきたりを守ることがとても重要で、それができていないと裁判に支障が生じますし、裁判所から嫌われることになりますね。そういうしきたりを司法研修所で教え込まれます。

加えて、司法研修所の中で優秀な成績を修めた人は裁判官になるというリクルーティング機能もあります。自分は裁判官、検察官には興味がなかったのでその道には進みませんでしたが。

成果にこだわらず、行為そのものを好きになってのめりこんだ


ー首都大でよかったことを教えてください。

先ほど述べた法学研究会を一緒に作った、個性豊かな仲間と出会えたことです。

法律の勉強は1人でしたほうが効率がよい面もありますが、法学研究会は色んな目標を持った人が集まって、みんなで楽しみながら勉強ができる場所でした。

卒業後の進路は、キャリア官僚や法曹になった人、大企業やベンチャー企業に就職した人など様々です。それぞれの場所でみんな活躍しています。

法学研究会のサークルページはコチラ

ーゼミには加入していましたか?

特殊な例だと思うのですが、加入していたゼミは3つあります。法律基本3科目と呼ばれる、憲法、民法、刑法のゼミに入っていました。憲法は、メディアにもよく出演されている木村草太先生のゼミでした。

3つ入った理由としては、教授と議論して、法律の理解を深めたいと思ったからです。大学1~2年で一通り基本は学んでいたので、応用的なことを学びたいと思いました。

ーやらなくて後悔したことを教えてください。

留学は行っておけばよかったなと後悔しています。

ーそれは語学学習のためですか?

そうですね。英語学習のためです。今苦労しているんですよね。

ー専門分野だと特に難しそうですね。

特に大変ですね。一般の英語なら雰囲気で理解、表現できるところがありますが、法律英語は厳密に組み立てられているので、そうはいきません。

私は大学時代、法律の勉強を優先して、意図的に英語の勉強を後回しにしていたんです。司法試験に受かった後は逆に英語ばかり勉強していましたが、英語でビジネスメールを書けるようになった程度で、英語で行われる会議に参加すると聞き取るので精いっぱいです。大学時代の自分の姿勢を後悔しています。

正直、日系企業で働きながら英語を身に着けるのは難しいと思います。なぜかというと、元々英語ができる人に英語の仕事は集中して、英語のできない人には日本語の仕事ばかり来るからです。

つまり、英語を使う仕事がしたいなら、社会に出る前に英語が堪能である必要があるということです。

英語が堪能になるには留学が手っ取り早いと思いますが、留学は学生のうちでないとできないですし、学校って交換留学制度があるじゃないですか。学校が行けと言ってくれているのだから、それに乗っからない手はないと思います。

英語力があれば、できることの幅が一気に広がりますし、英語の案件が来たときにそれを掴み取るチャンスを得られます。また、海外で仕事をしたいと考えたときにその実現可能性が高まります。

ー今後の展望を教えてください。

アメリカやヨーロッパなどの海外が好きで、海外で生計を立てたいと思っていた時期もありましたが、弁護士は日本法の専門家なので基本的には日本にいないといけないんですね。

でも、チャンスがあれば海外に飛び込みたいと考えています。基本は今の仕事の延長でということになりますが。

売上目標は持っていて、年間1億円です。企業法務の弁護士は10年で一人前といわれているので、10年目にはそのぐらいの売上に値する良い仕事をしたい、それだけの価値をクライアントに提供できる弁護士になりたいと思っています。

また、どのような分野で専門を作っていくかまでは現時点で定めていませんが、仕事のスタイルとしては、リーガルテックを取り入れながら、クライアントに迅速で質の高いサービスを提供するのが理想です。

今後、AIの開発や改良がどんどん進み、人間が行う仕事が減っていくといわれていますが、良いAIならどんどん人間の仕事を奪ってほしいです。そして自分は人間にしかできない付加価値の高い仕事に集中していきたいと考えています。

ー学生に向けてメッセージをお願いします。

私が大学で弁護士を目指して勉強しようと思った最初の動機は、正直、大学受験が不完全燃焼だったこともあり、自分はまだまだできるはずだ、ロースクール受験や司法試験でリベンジしたい、という想いからで、ある意味幼稚な動機でした。

しかしその後、勉強好きな友人と出会ったり、本をたくさん読んだりする中で、徐々に勉強にのめりこんでいき、もっと知識を増やしたい、もっと理解を深めたいと思うようになりました。

気がついたら、毎日のように、友人と本気で議論をしたり、閉館まで図書館にいるのが当たり前になっていました。そして、気がついたら、東大ロースクールに受かり、予備試験に受かっていました。

個人の経験を踏まえると、何か成果を出したいと思っているうちはちゃんとした成果は出なくて、成果にこだわらず、行為そのものを好きになってのめりこんだときに、はじめてちゃんとした成果が出たなと思っています。

皆さんには自分の殻にこもらず、色んな人と出会い、世界を広げて、好きなことを見つけてほしいです。

 

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